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2017.11.29

「旅行用心集」 八隅藘菴著 文化7(1810)年

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「地球の歩き方」が創刊されたのはWikipediaによれば1979年なので、私が卒業旅行でお世話になるころにはすでに10年がたっていたことになる。

卒業旅行は生れてはじめての海外旅行で、その時にやはり生れてはじめて飛行機に乗った。
手元に「地球の歩き方 ヨーロッパ’86~’87版」がある。
その奥書をみると、初版は昭和54年、つまり1979年に「’80年版」が発行されたことがわかる。

手元にあるものは、改訂新版発行(大改訂版)である。
手書きで「1986.7.7」とあり、これは購入日だろう。


最初のパートは各地の案内ではなく、海外旅行に関するいろいろな情報や注意書きが掲載されている。それだけで全800ページのうち、116ページまでを占めている。

第2章が「旅の手続き」、第3章「旅の道具」、第6章「旅の予算」、第14章「国境の越え方」などとなっており、このあたりに鉛筆で多くアンダーラインを引いている。クレジットカードや、外貨、現金、服装の件などなど、まだ見ぬ海外のこと、そして海外旅行とは一体何なのか、インターネットもない時代に、必死に想像し事前に学習していたことを想いだす。

しかし実は実際に旅にもっていったのは「地球の歩き方」ではなくて、JTBから出版されていた、似たようなコンセプトとのガイドブック「JTBのフリーダム① ヨーロッパ自由自在」だった。A5変型という大きさも同じ、ページ数は895ページ(1989年改訂2版)と、地球の歩き方より95ページ多い。
後発ではあるが、「地球」に追いつき追い越そうとした編集努力がみられるような気がする。

ところが先の旅の用心集のページは102ページと「地球」よりも10ページ以上も少ない。

初めて海外旅行に行く学生にとって、不安感と期待感を醸成しそしてそれに答えたのは間違いなく「地球」だった。文章も巧みだった。「Immigration (入国審査)」(P49)にはこのように書かれてある。

 いよいよ目的地に着いた。すべてが初めての体験で緊張する。
 でも、落ち着いて深呼吸を1つ。だれでもが通過していくのだから、
 自然にしていればうまくいくのだ。


「地球」を読んだ時の高揚感は今でも明確に覚えている。経験者の投稿などもそれを旅のリアリティを醸していた。しかし出国手続きの記載は何度読んでも実感がわかなかった。今にして思えば出国審査自体はそこまで大げさなものではなく、また事前に勉強するようなものでもないような気もするが、まあ、そういう時代だったのだろう。


前置き長くなったが、さて、なぜそのようなことを突然思い出したかといえば、先日、古本屋で

 「旅行用心集」 八隅藘菴著 文化7(1810)年

という本を見つけたからである。


これはタイトル通り、旅に出かける人に対するその準備や旅先で注意すべきことが書かれているガイドブックである。

冒頭はこんな感じ。


 夫(それ)人々、家業の暇(いとま)に伊勢参宮に旅立するとて其用意をなし、道連等約束し、いついつかは吉日と定、ここかしこより餞別物など到来し、家内も其支度とりとりに心も浮立ばかりいさきよきものハなし。

 ジャーナリストの今井金吾があとがきを書いていて(1971年)、「今でも通用する旅の心得を集大成したのが」この「旅行用心集」と解説しているが、まさしくそれは「地球」の最初のパートと同じである。


「旅行用心集」の170年後に出版された「地球の歩き方」であるが、その意図するものに共通性があるとするならば、旅に出る人の気持ちは時代を経てもあまり変わらないものなんだと思う。


ところがデジタルエコノミーのさなかの現代、インターネットでありとあらゆる情報が手に入り、写真や動画、そして口コミでリアルタイムで遠く離れた地の情報が入手できるようになった。

旅行者は旅に出る前に、期待と不安が入り混じることはあるのだろうか。
それは昔とどの程度違っているのであろうか。

よく最近は、旅先での交流や体験が重視されるというが、旅先で期待する内容が変わってきている。しかしあんがい、旅に出る前の気持ちは変わらないこともあるのかもしれない。


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