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2013.03.23

お勧め本:地域プラットフォームによる観光まちづくり: マーケティングの導入と推進体制のマネジメント

先日ご紹介しました、


地域プラットフォーによる観光まちづくり
~マーケティングの導入と推進体制のマネジメント~


著者、大社充さんのインタビューです!


http://www.gakugei-pub.jp/chosya/001ookoso/index2.htm


○地域にもマーケティングとマネジメントが必要

大社:

   針江(田中さんが漁業をしていた中島)  国内の観光振興は、バブル崩壊以後、回復していませんよね。良い話が国内観光振興にはなくて、横ばいあるいは右肩下がりみたいな状況が続いています。なぜそうなるのか、どうしたら地域にお客さんが来てくれるのかを考えると、一つの課題として、地域が自らお客を集めなければいけなくなった状況というのがあります。従来であれば旅行会社にお客さん集めを任せていたのに、ごろっと変わってしまっているのです。
 ある意味、国内観光の主役は地域になっています。「着地型観光」という言葉も出てきていますが、まさに地域主導型の観光が現れ、それが主役になりつつあるのです。しかし、大きな問題は、地域自身が主体的かつ戦略的にお客を集める方法やノウハウを持ってないということです。
 これが一番の問題で、今や黙っていても客が来るという時代ではありませんので、地域自身が戦略的に自分たちの街にお客さんを集める仕組みやノウハウを持たないといけないのです。もちろん、今までのように旅行会社やいろんな外部組織に協力をしてもらうのは大事なのですが、それ以上に自分たち自身の戦略を持っていることが大事なのです。そういう時代になってきているのですね。
 そのための方法論が、日本にはありません。ですから、地域を一つの集客装置、たとえば東京ディズニーランドと見立てて、企業でやっているようなマーケティングの考え方を導入して考えてみました。
 その考え方を導入することで、不特定多数に向かって「来てね」と言うよりは、地域の特徴や地域資源を価値があると考えているマーケットに適切につなげることができます。日本の地方もそうしたことをやっていかなければいけないだろうと思います。
 そこで、地域振興型の観光振興を進めるためのマーケティングならびにそれを成果に結び付けるためのマネジメント、この2点に的を絞って本を書き上げました。これが、本書の執筆動機ですね。
○主体となるのはプラットフォーム型の観光まちづくり組織

前田:
 地域主導でと一口に言ってもいろんな人がいますから、地域が必ずしも一つの企業のように動けるかというと、難しいところがあるのではないかと思います。その中で、どうやっていけばいいでしょうか。
大社:
 そうですよね、難しいところです。従来の地域の観光振興の主体は観光行政、観光協会が二人三脚でやっていて、そこへ事業者さんが加わって観光振興を進めてきたというスタイルでした。ところが、近年、特にここ10~15年の間に新たなスタイルで事業を進めていく人たちが出てきたのです。観光とまちづくりを一体化して進めていく事業組織が登場してきたわけです。それを本書では「プラットフォーム型の観光まちづくり組織」と呼んでいるのですが、自ら地域資源を商品化してお客さんを呼び込んでくる機能を持っている組織が各地で少しずつ生まれてきています。
 本ではそういった組織を紹介しながら、従来の観光推進スタイルとは違う体制でお客さんを集めていることに注目しています。加えて、もしかしたら従来の観光協会が今後、行政からの補助金もなくなって自立を求められた時のあり方にもつながってくるのではないかとも考えています。これは近い将来の話ですが。
 そういった観光まちづくりの動きは各地で進んでくるだろうと思っています。
○地域密着型の組織とともに広域のマーケティング組織が必要

前田:
 そういう観光まちづくりの組織はかなり地域密着型でいろんなタイプがあると思いますが、同時に地域で全体のイメージを売り込むとか、マーケティングをするというのは専門性を持っている組織がやるべきことではないでしょうか。
 つまり、いろんな組織が全然違う方向を向いて活動しているよりも、マーケティングなんかは一つの組織が統括的にやった方が良いように思うのですが、そのあたりはどのようにお考えですか。
大社:
 本で紹介している観光まちづくりの組織はそのほとんどが民間の組織なんです。自立した財政基盤を持ち、行政と対等なパートナーシップを持っているような組織です。その中には地域の代表性を持つ組織もあれば、そうじゃない組織もある。いずれにしても、どの組織も地域のイノベーションと言いますか、地域のソーシャルビジネスを生み出しているわけです。ですから、核となる観光まちづくり組織があって、周辺のスモールビジネスが生まれていって地域全体が元気になるという機能を持っているのです。そうした組織が地域にいっぱいできてくると、地域経済も活性化されていくだろうと予測されています。
 一方、個々の自治体がそういう観光まちづくりの組織がどんどん生まれて、それぞれが客を集めたらいいよねと言い切れるかどうかというと、そうでもありません。と言うのも、全ての組織にそういうソーシャルビジネスを立ち上げて、持続可能な経営ができる人材がいるわけではありませんから。まして、予算も限られてくる中では難しいことです。
 今の観光推進の体制は行政機構準拠型ですから、各自治体ごとに観光協会があるというシステムになっています。これをマーケット志向、つまりお客さんの視点に立って「このエリアがひとつの観光エリアになる」というところに一つの広域な観光組織を作り、そこがマーケティングの機能を持って、そのエリアの観光戦略を作り、幾つかのプロジェクトマネージメントを自治体や民間企業と組んで進める体制を作っていくのがいいんじゃないかというのが、本書の最大の提案であり、主張です。
○観光振興の成功のポイントは次の世代を育てること

前田:
   別府(竹瓦温泉)  最後に読者、特に地域で観光振興に頑張っておられる方々に向けてメッセージをお願いします。なかなか先の見通しが見えなくて、しんどい思いをされている方々が多いと思いますし。
大社:
 地域で頑張っている人へのメッセージ…うーん、そうだなあ。やっぱり、少なくとも私の見てきた限りでは、次の世代のことも含め、50年、100年というタームで物事を見ていった方がいいという気がします。どの地域もそうですが、どうしても過去の成功体験からなかなか抜け出せないのですね。観光にしても80年代に良かった頃の記憶を持っている人たちがいて、その人たちが観光業界の中で上の地位にいるわけですよね。そうすると、今後の展開を考える時にもどうしてもその頃の考え方に支配されてしまう。そこから脱却するためには、次の若い世代がそこをブレイクスルーしていかないといけないと思うんです。
 だから観光振興の大事な仕事は、次の世代を育てることで、彼らは自分たちの価値観と違うかもしれないけれど支援するという体制が必要です。そうした体制がある地域とない地域では、決定的に違うと思います。もちろん、若い世代の未熟な発想は叩かれたりすることもあるのですが、やはり若い人たちに出番を与え、失敗も許してチャンスを与えるという環境をみんなで作っていかないとなかなか新しいことは出てきません。個人で頑張れと言っても、限界がありますよ。
前田:
 この本で紹介されている観光まちづくりの組織は、そういう意味でも良い場所を作ったという事例でもあるわけですね。
大社:
 そう思います。それぞれ成功していますが、地域のなかですべての人に支持されているわけではなく、やはり反対している人もいるんです。全員賛成ではないわけで、例えば6対4もしくは5.5対4.5ぐらいの賛成の中で頑張っている人たちなんです。しかし、少なくとも地域で支援をする体制があるからこそ、事業が軌道に乗っていったのです。南信州観光公社もおぢかアイランドツーリズム協会もそうですが、いろんな議論が長年積み重なってできていたり、過去の勉強、研究があって今の状態があるという形です。ですから、急にぽっと突然出てきた話ではない。そういうことはよく調べれば調べるほど分かってきます。
 すぐに結果を出したいというあせる気持ちは分かりますが、こうした観光まちづくりは簡単には結果が出ないものなのです。せめて5年ぐらい、本当言うと10年ぐらいは頑張らないといけない。そういうスパンのものじゃないかと思いますね。
○若い世代とは何歳ぐらい?

前田:
 ありがとうございました。ところで、質問の趣旨からはずれるかもしれませんが、先生のおっしゃる「若い人」というのはだいたいどのぐらいの年代を想定されています?
大社:
 ある人から聞いたことなんですが、「若い奴は黙っとけ」と言われた若い奴というのが50代だったという話があります。でもまあこれは極端な話で、やはり30~40代が今後中核になっていく世代だろうと考えています。やはり、そうした人たちに活躍の場をどんどん増やしていくことが必要だろうと考えています。
前田:
 ということは、今はなかなかそういう人たちに活躍の場がなくて、60~70代が仕切っている場がまだまだ多いということなんですね。
大社:
 それも閉塞感の一つの要因だと私は思いますね。だから、例えば「女子旅の研究会をやろう」と50代のおっちゃんたちがやろうとしても無理に決まっているんです。そういうことはやれる人にやってもらって、それを支援するという側に回って欲しいですね。「俺がやらなきゃ」というふうに思わない方がいいんじゃないでしょうか。
前田:
 ありがとうございました。

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